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グリーンボンドで持続可能性な社会へ|原則からメリット・デメリットまで徹底解説

グリーンボンドとは、地方自治体や企業が気候変動の緩和など、環境問題への取り組み(グリーンプロジェクト)による持続型社会達成の事業資金の調達のために発行する債券(ボンド)の一種です。

グリーンボンドの特徴は調達した資金の使途がグリーンプロジェクトに限られること、またそれらについてのレポーティングを通じて透明性を確保する必要があるという点です。

2018年時点で、世界の発行総額は約1,670億ドルと前年比3%増の伸びを見せており、グリーンボンドによるプロジェクトが、投資家の間で広く認知されるようになったといえます。

当記事ではグリーンボンドの魅力からその仕組み、メリット・デメリットについて詳しく紹介します。

1 グリーンボンドとは?その発行の背景と現状

わたしたちの暮らす地球では、さまざまな環境問題が深刻化しています。各国・各地域で水害や豪雨などといった災害が発生しており、その被害は年々激しさを増しています。また、汚染水の放流やプラスチックゴミの投棄などによる海洋汚染も顕在化しており、早急な対策が必要です。

そこで、これからは国に任せた対策だけではなく、各国の自治体や企業も主体となって環境改善プロジェクトに取り組むことが求められるようになりました。

そのための資金調達の手段のひとつとして、グリーンボンドという新しい資金調達の投資手法が作られたのです。

具体的には、地方自治体や企業が気候変動の緩和など、環境問題への取り組みによる持続型社会達成のための事業資金を集めるために発行する債権(ボンド)を指します。

1-1.  グリーンボンド原則

グリーンボンドは、環境改善効果が見込まれる企業の資金調達のために発行され、取引の指標にグリーンボンド原則(Green Bond Principles: GBP)と呼ばれる業界の自主的ガイドラインが策定されています。

投資家らはグリーンボンドの市場が急激に拡大するにつれ、取引の定義やプロセスについての透明性を図ることを考え、自主的なガイドラインの策定をおこなう必要に迫られたのです。

以下は、GBPの核となる4つの要素です。

①調達資金の使途の明確化
②プロジェクトの評価及び選定のプロセス
③資金調達の管理
④環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するレポーティング

グリーンボンド投資は、こうした原則を守ることで、より安全で安心した取引が可能となりました。

1-2. グリーンボンドに期待されること

グリーンボンドとは、地球温暖化防止のために太陽光発電システムなどを活用する事業(グリーンプロジェクト)のみに充当することを明らかにして資金調達するものです。

そのため、発行体とグリーンプロジェクトに投資したいと考える投資家との間の対話と理解が重要となります

こうしたコミュニケーションを通じて、グリーンボンドが投資対象として魅力があり、リターンの大きな投資対象として選択されるか否かを市場に委ねられるようになります。

債券市場にはグリーンボンドに似た「グリーンウォッシュ債券」があり、この債券は上辺だけ環境に配慮していると偽った存在です。

したがって、グリーンボンドには、発行体と投資家の間の対話を基礎とした投資対象としての適切性と、それぞれのステークホルダーにとってグリーンプロジェクトが魅力的な投資対象であり、かつ社会的に信頼されるものであることが期待されています!

1-3. レポートの重要性

グリーンボンドは透明性の確保が大切であり、グリーンプロジェクトへの取り組みを網羅したレポートを投資家に提示することが求められます。そのひとつ目は環境破壊をどのような技術で改善し、防止するかを示したレポートです。

その取り組み課題の例として、次の6つがあげられます。

  1. 気候変動への緩和対策
  2. 気候変動への適応
  3. 水と海洋資源の保護
  4. リサイクルの促進
  5. 水・大気・土壌などの汚染防止、改善
  6. 生態系の保護

これらの事業の計画や実施状況、経過について詳細にまとめレポートを作成します。

なかでも注目すべきは、2015年の「パリ協定」で採択された、温室効果ガス削減による気候変動緩和対策への取り組みです。グリーンボンドは、温室効果ガス削減のために、太陽光発電システムの増加をはじめとした再生可能エネルギーなどへの投資に有効な資金調達手段として期待されています

二つ目としては、ESGスコア(環境、社会、ガバナンスの評価)と、温室効果ガスの出所を探すカーボンフットプリント(炭素の足跡)などを提示し、レポートに盛り込むことも重要です。

カーボンフットプリントは気候変動を防止する上で欠かせない活動であり、人為的な排出源の特定と、それに関わる事業の改善にグリーンボンドは有効な投資手段となります。

1-4. グリーンボンド発行の現状

グリーンボンドの発行額は年々増加しており、2019年は8,238.3億円と2017年の2,223.0億円の約4倍まで発行額を伸ばしています。この勢いはますます強まっており、2020年6月時点では2,539.5億円とすでに2017年の発行額を上回る勢いをみせています。

日本国内の発行体は金融機関を中心に増え始め、環境保護ビジネス企業の割合も増加傾向。更に、地方自治体などが地域の環境整備の原資として発行していることが、発行額を増やす大きな要因となっています。

国内では日本政策投資銀行や住宅金融支援機構などが発行をはじめ、民間では金融機関の三菱UFJフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほ銀行などが発行体となっています。

また、発行体の業種も多様化しており、不動産業界では住友林業、住友地所が、海運では商船三井、日本郵船、またITシンクタンクの野村総合研究所、さらに丸井グループといった小売業なども発行しています。

2. グリーンボンドのメリット・デメリット

グリーンプロジェクトへの投資は、グリーンボンドの発行体、投資家双方にとってメリットが多く、発行体はグリーンプロジェクトの資金調達や、投資家への融資の原資を調達することができます。

一方、資金の使途がグリーンプロジェクトだけに限定されてしまうため、その約束を破った場合は債務不履行となってしまうというデメリットがあります。

以下では、グリーンボンドの発行体、投資家、また双方にとってのメリット・デメリットを解説します。

2-1. グリーンボンド発行体のメリット

投資家は、サスティナビリティ(持続可能性)経営の高度化に貢献でき、企業等のガバナンス、経営戦略、リスクマネジメントの体制整備につなげることができます。

つまり、グリーンボンドを発行することで、自治体や金融機関はグリーンプロジェクトに貢献している団体・企業として、社会的なステータスを得ることができるのです。

グリーンボンドを発行することで得たステータスは、他の投資家との新しい関係を築くことができ、投資資金の原資を強化する可能性を高めることができます。

例えば、太陽光発電システムなど再生可能エネルギー事業などの有望な投資先に対して、発行体は巨額な資金を運用するユニバーサル・オーナーなどへの訴求効果を高めることができるのです。

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2-2. 投資家のメリット

グリーンボンドは資金使途の透明性がレポートによって明確になっているため、投資家にとってはデフォルト(債務不履行)のリスクが低い債券といえます。

したがって、グリーンボンドは投資家にとって他の株式や債券などとの価格連動性が低い、オルタナティブ投資によるリスクヘッジが可能となります。

また、投資家はグリーンプロジェクトへ直接投資することで、「パリ協定」を踏まえた地球温暖化防止への取り組みをアピールすることができるなど、社会的なステータスをあげることもできます

さらに、こうした投資活動は将来予想される地球温暖化による世界規模の社会、経済などのリスクヘッジとしても有効な手段となるでしょう

2-3. 発行体、投資家双方のメリット

発行体、投資家双方のメリットとして、地球環境の保全が進むことにより、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーや省エネルギー等の事業の普及、拡大に貢献することができます。

それにより、グリーンプロジェクトへの民間資金の導入拡大が図られ、発行体、投資家、企業の長期的利益の基盤となります。また、グリーンボンドは個人投資家のグリーンプロジェクトへの興味を高め、積極的なグリーン投資を促す原動力になるといえます。

このように、グリーンプロジェクト推進は社会・経済問題の解決に貢献し、エネルギーコストの低減、エネルギー安全保障の強化、地域経済の活性化などを後押しすることになります。

2-4. グリーンボンドのデメリット

グリーンボンドのデメリットとしては、集めた原資の使用使途がESG(環境、社会、ガバナンス)の環境分野に限られ、このグリーンボンドに関わる約束を順守しなかった場合は債務不履行になります。

この際、債券を引き受けた金融機関は免責されますが、投資家は法的補償を受けられない可能性があります。さらに、発行体である金融機関などは、重大なレピュテーションリスク(評判リスク)を負うことになります。

つまり、グリーンボンドの約束に反した企業のイメージダウンによって、市場への悪影響は多大なものとなるため、株価の下落などによる損失が発生する可能性が高まるのです

3. グリーンボンドの種類と他の債券との違い

企業などが事業を拡大するための資金調達の方法には2種類あり、ひとつは株式、もうとつがグリーンボンドなどの債券です。債券は負債証書、あるいは借用証書の一種であるといえばイメージしやすいでしょう。

つまり債券とは、借金を法律に準拠した形で債券化することで、資金の貸し手である投資家間で自由に売買することが可能となるのです。

ただし、グリーンボンドは一般の債券と違い、その資金は環境に関する事業にしか使うことができないといった特徴があります

その特徴から、現在発行されているグリーンボンドの種類を大別すると、次のような4種類があげられます。

①標準的グリーンボンド(Standard Green Use of Proceeds Bond)
プロジェクトに必要な原資を特定の財源に頼らず、発行体全体のキャッシュフローで調達する目的で発行する

②グリーンレベニュー債(Green Revenue Bond)
プロジェクトのキャッシュフロー、使用料、税金などを原資に償還する

③グリーンプロジェクト債(Green Project Bond)
単一または複数のプロジェクトのキャッシュフローを原資に償還する

④グリーン証券化債(Green Securitized Bond)
これから生まれる資産を原資に償還する

このように、発行体自らが資金を調達するもの、グリーンプロジェクトで得た利益やプロジェクトを証券化して原資を得るものなどがあり、今後もその種類は増えていくことが予想されています。

4. グリーンボンドの可能性

ドイツは2020年、総発電量に占める再生可能エネルギーの割合が、化石燃料より上回る成果をあげ、脱炭素を実現させました。このドイツの取り組みは、グリーンプロジェクトを世界各国が積極的に取り入れるきっかけとなり、環境の保全・改善に多くの成果をあげています。

英国では、再生可能エネルギーに特化した保険代理店GCube社が東京海上HDと合併し、業績を伸ばしています。

4-1. 二国間開発プロジェクト

複数の先進国が運営する国際機関に対して、先進国が単独で運営する援助機関は二国間開発援助機関と呼ばれます。

例えば、カナダ公社やドイツ復興開発金融公庫などがそれにあたり、グリーンボンドを発行し、大気、水、土壌の保全や保護、温室効果ガス削減に役立つプロジェクトに資金を投じています。

4-2. 州、市などの活動

カナダのブリティッシュコロンビア州は新設病院の省エネ施設化を支援するため、2014年にグリーンボンドを発行しました。

また、スウェーデンのヨーテボリ市は、グリーンボンドを発行し、公共交通、水道管理、エネルギー、廃棄物管理の事業などに資金を投じています。

さらに、南アフリカのヨハネスブルグ市でも、バイオマスプロジェクト、太陽光発電システム等の資金調達のためにグリーンボンドを発行し、開発資金に充てています。

まとめ

日本でも自治体をはじめ金融機関などがグリーンボンドを発行し、ESG投資の市場は広がりをみせています。

なかでもグリーンプロジェクトへの投資意欲は高まっており、自治体では東京都がグリーンボンドの5年債、10年債の2種類を発行しています。

グリーンボンドは今後も世界の環境意識の高まりと共に大きな市場に育つと予想されており、日本でも国策金融機関やメガバンクといったグリーンボンドを発行する企業が増えています。

今後、グリーン債券の引き受け先が増加し、取引環境の整備が進むことで、日本市場の成長が加速していくことが期待されています。

また、グリーンボンドとセットで抑えておくべきESG投資という言葉があります。興味のある方は下のリンクからESG投資に関して詳しく解説された記事もチェックしてみてください。

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