新たな資金調達として注目されている「クラウドファンディング」。
しかし、クラウドファンディングと一口に言っても種類は様々です。
そこで本記事では、クラウドファンディングを5種類に分けて解説します。各種類の内容やメリット・デメリット、代表的なサイトまで解説しています。
クラウドファンディングで失敗しないためには、プロジェクトの特性にあった内容を選ぶ必要があります。これからクラウドファンディングで資金調達をいていくことを考えている方や、出資を検討している方はぜひ参考にしてください。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングとは資金調達の一種で、大勢の個人投資家から資金を集めることです。
クラウドファンディング(crowdfunding)という言葉は、「crowd(大衆)」と「funding(資金調達)」を組み合わせた造語です。
従来の資金調達法は金融機関から融資を受けたり、株式で資金を集めたりする方法が主流でした。しかし融資を受ければ会社の生殺与奪は金融機関に握られ、株式発行は他社に買収されるリスクもあります。
そこで大口の資金調達を小口に分け、個人投資家を対象にした資金調達が「クラウドファンディング」というわけです。
クラウドファンディングのメリットとして、個人投資家が少額から投資できる点や、金銭以外の商品・サービスでリターンを受け取れることがあります。
一方で、起案者(資金を集める方)は金融機関から出資を受けられない事業でも資金調達できることや、出資者に金銭以外でリターンを渡せるメリットがあります。
クラウドファンディングは全部で5種類ある
一口にクラウドファンディングといっても、さまざまな種類があります。
また5種類のクラウドファンディングも、大きく「投資型」と「非投資型」の2つに分けられます。
<投資型のクラウドファンディング>
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<非投資型のクラウドファンディング>
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それぞれの種類のクラウドファンディングでは「プラットフォーマー」と呼ばれる仲介業者がいます。
プラットフォーマーは「起案者(プロジェクトを募集する)」と「出資者(お金を支援する)」の間をつないでいます。
3種類の「投資型」クラウドファンディング
投資型とは、出資の見返りに金銭や株式などのリターンを受け取れるクラウドファンディングのことです。投資型のクラウドファンディングは、主に3種類です。
①融資型
融資型とは、出資者からお金を集めて、それをプロジェクトに貸し付けるクラウドファンディングのことです。
銀行の融資と仕組みが同じで、起案者は大勢の出資者からお金を借りてプロジェクトを実行し、借りたお金の利子を出資者に返還します。
融資型でよく取り扱われるのは、不動産や太陽光などの投資性が高い金融商品です。
事業を始めたいけど、資金が足りないA社(起案者)がいるとしましょう。そこでA社はクラウドファンディングを利用して、プラットフォーマーから資金を5%で調達します。
次にプラットフォーマーは、出資者に対して「A社のプロジェクトに利回り3%でお金を貸しませんか」などと募集をかけます。
プロジェクトに賛同した出資者が金利3%でお金を貸すことで、A社はプロジェクト開始です。なおプラットフォーマーは、その利ざや(貸出金利と調達金利の差)で収益を得ています。
要するに融資型のクラウドファンディングでは、お金を借りる先が金融機関ではなく、大勢の投資家が相手となっています。
融資型のメリット
融資型のクラウドファンディングのメリットは、以下のとおりです。
【起案者】 社会的信用が低いベンチャー企業や小規模事業者でも、成長が見込めるプロジェクトであれば資金調達が可能になる 【出資者】 融資型は利回りの高いプロジェクトが多く、大きな収益を得られることも |
出資者にとって成長の見込みがある会社に投資でき、また起案者にとってもクラウドファンディングは新たな資金調達の手段となり得ます。
融資型のデメリット
一方で融資型のデメリットは何でしょうか?
【融資型】 資金調達の金利が高いこともあり、金融機関から融資を受けた方が金利は安いこともある 【出資者】 起案者がベンチャー企業や小規模事業者の場合、投資額より値下がりすることもある |
出資者先が企業体力のない会社だと貸し倒れのリスクもあるので、クラウドファンディングでは慎重な投資が求められます。
融資型の代表的なサイト
融資型で代表的なWebサイトを見ていきましょう。
「クラウドバンク」 融資型で最大級のクラウドファンディングサイト。応募総額1,000億円を突破し、利用件数は延べ53万件にも及ぶ(2020年7月時点)。 SBIグループ会社。融資残高は総計426億円、登録者数は約5万7千人にも及ぶ実績ある会社(2020年8月時点)。 |
②ファンド型
ファンド型とは、プロジェクト実施のための資金を、ファンド(基金)として集めることを指します。
一見融資型と似ていますが、中身は異なります。それは、「融資型」は出資者が受け取るリターンは”利子”であるのに対し、「ファンド型」は”配当”で対価を受け取る点です。
起案者はプロジェクトを始めるのに、プラットフォーム上で募集をかけます。
プロジェクトに賛同した出資者が小口でお金を支援することでファンド(基金)が作られ、起案者はプロジェクト実行開始です。
出資者へのリターンは起案者の売り上げの何%かを分配金で配当しますが、金銭以外にも商品や食事券などを渡すこともあります。
ファンド型の事例として、事業拡大のための設備投資や新規出店などに資金が使われます。
融資型とは異なり、起案者・出資者間が配当金で取引されるのがファンド型の特徴です。
ファンド型のメリット
ファンド型のメリットは、以下のとおりです。
【起案者】 新規出店による地域貢献や航路開拓による観光推進など、社会貢献性の高い事業に向いており、また資金も集まりやすい 【出資者】
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後に説明する「購入型」や「寄付型」と比べて人気はありませんが、ファンド型は社会的意義の高い事業で取引されやすい傾向にあります。
ファンド型のデメリット
ファンド型のデメリットは、以下のとおりです。
【起案者】
【出資者】 思ったような売り上げがないと、十分な分配金を得られず収益にならない |
ほかのクラウドファンディングでも共通して言えますが、ファンド型は出資者にリターンを返す必要があります。そのためシビアに、収益を上げていくことが求められます。
ファンド型の代表的なサイト
ファンド型の代表的なWebサイトは、以下のとおりです。
「セキュリテ」 ファンド型の大手プラットフォーマー。事業支援や技術開発など、社会貢献性の高いプロジェクトを多数取り扱っている。第二種金融商品取引業者。 |
③株式投資型
株式投資型は、起案者がプラットフォーマー上で株式を発行し、出資者がその株式に投資するクラウドファンディングです。
通常、上場会社の株式は東京証券取引所などで取引されます。しかし未上場会社は証券取引所で株式を公開できないため、自分で株式譲渡先を探す必要があります。
そこで株式の譲渡先を見つけるのに利用できるのが、クラウドファンディングです。プラットフォーマーが、未上場会社と投資家の間をつないでいます。
株式投資型のメリット
株式投資型のメリットは何でしょうか?
【起案者】 ベンチャー企業や小規模事業者でも、株式で資金を調達できる 【出資者】 非上場株を取得できるので、将来的に大幅なリターンを得られることもある |
何と言っても株式投資型の醍醐味は、今後成長が望める会社の未公開株を取引できることにあります。
株式投資型のデメリット
株式投資型のデメリットは、以下のとおりです。
【起案者】 1つの会社が調達できる調達額は1億円未満なので、1億円以上の大型資金調達はできない 【出資者】 未公開株式の売却には発行会社の譲渡承認が必要なケースも多く、自由に売却できない |
未公開株の取引は上場会社よりも大きく値上がりする可能性はありますが、一方でそれだけ大きなリスクを抱えることにもなります。
株式投資型の代表的なサイト
株式投資型の代表的なWebサイトは、以下のとおりです。
「FUNDINNO(ファンディーノ)」 国内シェアNO.1の株式型専門サイト。累計成約額は36億円超えで、投資家は約4万人にも及ぶ。公認会計士などによる厳正な審査や、資金調達後のIR情報発信のようなアフターフォローが特徴。 金融メディアZUU online運営会社「株式会社ZUU」のグループ会社が運営。投資銀行や証券会社出身のプロが多く在籍し、情報力や投資判断力に定評がある。 |
2種類の「非投資型」クラウドファンディング
非投資型とは、リターンが金銭以外の商品・サービスや、対価がないクラウドファンディングのことを言います。非投資型のクラウドファンディングは、おもに2種類です。
①購入型
クラウドファンディングで最も取引の活発なのが「購入型」です。出資者はプロジェクトにお金で支援しますが、対価は商品の購入権やサービスなどになります。
購入型のジャンルは、実質「商品の予約販売」です。また自社商品の販売やアプリ開発、動物の保護など、購入型のジャンルは多岐にわたっています。
金銭的なリターンがないため、購入型ではプロジェクトの魅力を底上げしたり、出資者に十分なメリットを訴求したりすることが大切です。
購入型のメリット
購入型のメリットは何でしょうか?
【起案者】 自社商品・サービスのファンづくりに適しており、出資者がファンになれば長期的な顧客にもなる 【出資者】 金銭以外の商品・サービスで対価を受け取れる。中には会社オリジナルのグッズや特別イベントの参加、飲食店の食事券など、魅力的なリターンがある。 |
購入型は商品・サービスの魅力や社会的意義に対して支援されるため、たとえ利益が生みにくい事業でも支援を受けやすいメリットがあります。
購入型のデメリット
購入型のデメリットは、以下のとおりです。
【起案者】 プロジェクトを完遂できなければ、社会的な信用を失いやすい。宣伝にはSNSを使うことも多いので、信頼を失うと不評はすぐに広がる。 【出資者】 プロジェクトが想定どおり完遂されなかったり、プロジェクトを途中で放棄されたりすることも。そのため当初よりも、十分なリターンを得られないこともあり得る。 |
プロジェクトを想定どおりに完遂できなければ、起案者・出資者ともに損失を被るリスクがあることは重々承知しておきましょう。
購入型の代表的なサイト
購入型の代表的なWebサイトは、以下のとおりです。
「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」 国内最大級のクラウドファンディングサイト。4.1万件以上のプロジェクトが立ち上がり、360万人の支援が集まるほどの規模を誇る。 メディアやゲーム事業の「サイバーエージェント」グループ会社が運営。新商品や新サービスの支援を得意としている。 |
②寄付型
寄付型とは、その名のとおり寄付を募るタイプのクラウドファンディグです。クラウドファンディングではありますが、一般的な寄付と大差はありません。
寄付型クラウドファンディングは寄付なので、リターンはないことも。リターンされるとしても、ちょっとしたグッズや商品券などになります。
ただし寄付型クラウドファンディングは、寄付した後にコミュニティに参加できることがあり、コミュニティを通じて活動内容を共有することが可能です。
そのため寄付型クラウドファンディングは、社会貢献性の高いものとして認知されています。
寄付型のメリット
寄付型のメリットは、以下のとおりです。
【起案者】 大きなリターンを用意する必要はないので、コストを抑えてプロジェクトを実行できる 【出資者】 出資後にコミュニティに参加できることもあり、活動報告や進捗状況の報告を受けられる。社会貢献の実感を得られやすい。 |
寄付型は出資者にとって低コストで資金を集められるものであり、また社会貢献へ意欲が高い出資者の活躍の場にもなっています。
寄付型のデメリット
では寄付型のデメリットは何でしょうか?
【起案者】 市場価値のあるリターンを設定できないので、プロジェクトに出資者が集まりにくい 【出資者】 ほかのクラウドファンディングとは違い、大きなリターンを得られない |
ほかのクラウドファンディングとは違い魅力的なリターンを設定できないことも多く、思うように出資者は集まらない点がネックとなります。
寄付型の代表的なサイト
寄付型の代表的なWebサイトは、以下のとおりです。
「ReadyForCharity(レディフォーチャリティ)」 クラウドファンディング大手サイト「READYFOR(レディーフォー)」による寄付型の特化サイト。2015年からはじまり、地方公共団体も利用している。 「A-port」 朝日新聞社が運営するクラウドファンディングサイト。社会福祉法人やNPO法人などが多数利用している。 |
太陽光発電投資のクラウドファンディングが注目されている
近年では、太陽光発電投資のクラウドファンディングの動きが広まっています。
太陽光発電投資とは、太陽光で発電した電力を電力会社へ売電することで収益を得る投資です。太陽光発電は国が推進している分野でもあり、固定価格買取制度(FIT)によって、電力会社は一定の価格で買い取ることになっています。
つまり、太陽光発電は国が後押ししている分野でもあり、安定して収入を得られる魅力があります。
太陽光発電は「ファンド型」が多い
現在の太陽光発電のクラウドファンディングは、「ファンド型」で取引されることが大半です。
ファンド型では「利回り〇%で太陽光発電を運用し、出資者に分配金をお渡しします」などと募集をかけています。運用期間中に目標どおりの売電収入があれば、出資者も収益を得ることが可能です。
分配金は毎月支払われるものもあれば、年1回のみのこともあります。
ただし太陽光発電は天候によって売電量が左右されるため、当初予定したとおりに発電できなければ元本を割る可能性もあります。
目的にあった種類のクラウドファンディングを選ぼう
クラウドファンディングはおもに5種類です。
その5種類は「投資型」と「非投資型」の2つに分かれ、金銭でリターンを受け取るものから、商品の予約販売という形で取引されるものもあります。
起案者にとってはプロジェクトの特性により、出資者にとってはお金を支援する目的で、最適なクラウドファンディングの種類は異なります。
本記事を参考にして、ぜひ自分に適したクラウドファンディングを実践してみてください。
弊社では太陽光発電投資のクラウドファンディングを手掛けております。日本最大級の太陽光発電所の売買仲介サービス「ソルセル」の知見を活かして運用しています。
また2020年7月から、弊社が起案者としてクラウドファンディングで運用してきた「SOL SELL 再生可能エネルギープロジェクト #001」のウェビナーを実施します。日時は2020年10月21日(水)19:00~で、参加費は無料です。
ウェビナーでは現状報告以外にも、気候変動やFIT制度などの再生可能エネルギー市場に関わるお話もする予定です。
太陽光発電を含む再生可能エネルギーに興味のある方は、ぜひご参加ください。
参考書「クラウドファンディング2.」佐藤公信(2018),日本文芸社(https://www.nihonbungeisha.co.jp/book/b384165.html)