太陽光発電を設置する上で、費用対効果を得られるかという考え方が大切なことをご存知でしょうか?
費用対効果とは、費用をかけた分に対して、どれだけの効果(収益等)が見込めるかということです。
太陽光発電は何も考えずに導入すると、コストがかさみ費用対効果から見てデメリットになる可能性があります。また、デメリットを抑えて費用対効果を高めるには、初期費用・維持費用・売電収入に注目することが大切です。
これらの特徴・現状をよく理解上で、太陽光発電を導入すれば、費用対効果を得られる可能性が高まるだけでなく、長期的に運用するにあたって収支バランスを安定化させるポイントも把握できます。
そこで、太陽光発電の費用対効果に焦点を当て、初期費用や維持費用の概要や抑えるポイント、売電収入により元がとれるのか解説していきます。
太陽光発電システムの初期費用や回収方法
太陽光発電システムで元を取れるか考えるには、初期費用と回収方法のシミュレーションが必要です。詳しく解説していきますね。
新築の太陽光発電導入率は1~2割
新築される住宅のうち1~2割の住宅に、太陽光発電システムが導入されていると言われているそうです。実はわが家も新築時に太陽光パネルを約10kw載せました。
個人的には太陽光パネルやパワーコンディショナーのメーカーによって、それほど発電量や変換効率に差があるとは思っていません。それよりも屋根の方角や勾配など、太陽光が当たる条件によって変わるのではないかと考えているので、新築時は太陽光導入には最適な機会なのは間違いないと思われます。
太陽光発電の設置費用を下げるには
資源エネルギー庁によると、2024年度の太陽光発電システムの初期費用は1kwあたり25.5万円程度になると予想されています。(参考: 太陽光発電について 2022年12月資源エネルギー庁)
単純に計算すると、光熱費ゼロを目指す3kwの場合で工事費込み約80万円、少し売電できる程度の5~6kwで120~160万円、10kw以上になると250万円~くらいです。
パネルの量が増えるほど1kwあたりの単価が安くなり、パネル枚数が少ない程割高になるため、価格は前後します。また、太陽光のメーカーや設置場所によっても異なります。
設置費用を下げる場合は他社との競合が最も効果的です。新築の場合は工事の兼ね合いがあるので一概には言えませんが、既築住宅の場合、数社から相見積もりを取ることは費用削減効果があるでしょう。
電力自由化で初期費用をより抑えられる会社を選ぶ
2016年4月から電力が自由化されました。わが家にも電力自由化について説明にどこかの営業の方が来られて、ぜひシミュレーションさせてくださいと言われましたが、その時はまだ入居後1カ月も経っておらず比較するものがないのでお断りしました!
電力も選べる時代が来たので、携帯電話会社のように数年ごとに乗り換えることなどもありではないしょうか。
ただ、面倒な気もしますが、初期設置費用がそれほど抑えられなかった場合は、よりお得な契約先を選べるのはいいですよね。契約先によっては携帯代やガソリン代など他の費用とのセット割引なども可能なサービスもあり、今後も期待できます。
太陽光発電システムの維持費用
太陽光発電の発電効率を高く維持し、長く使っていくためには、3~5年ごとに1回の点検や、パワコンの交換などが必要です。
資源エネルギー庁の分析では、2024年度の維持費想定値は1kWあたり3,000円/年と試算されています。(参考: 太陽光発電について 2022年12月資源エネルギー庁)つまり、容量5kWの太陽光発電システムの場合、年に15,000円程度かかるということです。
これは毎年出費があるわけではありません。20年間太陽光発電システムを使うと考えた際の費用を、1年毎に割ったものです。
パワコン寿命は10年程度なので維持費用コストが高くなる
太陽光パネルで発電された電力を、交流電力に変換する装置がパワーコンディショナーです。1台あたり約3~5.5kw容量があるので、売電目的でなく家庭で使うためだけなら1台で十分でしょう。
1台当たりの価格は10~35万円と幅があり、容量が増えるほど高額となります。
10年に一度交換となると維持費用がかなり心配されますが、そのころには性能がもっと上がって価格も下がっているのではないかと言われています。それでも、10年ごとに数十万円の出費は痛いですね。
太陽光発電で発電した電気は売電できる
太陽光発電した電気を家で使いきれずに余った場合は、売電して収入を得ることができます!
固定価格買取制度と太陽光発電の関係
固定価格買取制度とは、再生可能エネルギー普及促進のために国が定める制度です。FIT制度とも呼ばれます。
太陽光・水力・風力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーで発電した電気は一定期間、相場よりも高い固定価格(FIT価格)で、大手電力会社に売電できます。
再生可能エネルギー普及を妨げる原因の1つとして、初期費用の高さがあります。固定価格買取制度のおかげで、売電収入が安定するため、家庭や企業の再生可能エネルギー導入を促進することができています。
固定価格買取制度の買取費用は、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)として、全ての国民の電気代から徴収されています。
住宅用太陽光発電と産業用太陽光発電の売電価格推移
FIT価格は年々下がっています。これは、太陽光発電システムの普及が進み、設備費用も年々安くなっているためです。
住宅用・産業用それぞれのFIT価格の推移を見てみましょう。価格は1kWh当たりのものです。
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|
買取価格 | 21円 | 19円 | 17円 | 16円 |
買取期間 | 10年間 | 10年間 | 10年間 | 10年間 |
容量 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
買取価格 (税抜) | 250kW以上 | 入札制度適用区分 | |||
50kW以上250kW未満 | 12円 | 11円 | 10円 | 9.5円 | |
10kW以上50kW未満 | 13円 | 12円 | 11円 | 10円 | |
買取期間 | 20年間 | 20年間 | 20年間 | 20年間 |
余剰買取と全量買取の2つの売電方法がある
太陽光発電の売電方法には、自家消費で余った分のみを売電する「余剰買取」と発電したすべての電気を売電する「全量買取」の2種類があります。
余剰買取の対象は、10kW未満の住宅用太陽光発電と、10~50kW未満の産業用太陽光発電です。容量が50kW以上の産業用太陽光発電は、全量買い取りの対象となっています。
余剰買取のメリットとデメリット
余剰買取のメリットは、自宅や自社で発電した電気を使うことができること、蓄電池を設置すれば夜や災害時も電気が使えることです。
デメリットとしては、売電収入が減る点が挙げられますが、そこまで大きな欠点ではありません。
最近は電気料金高騰し、売電価格(FIT価格)は定価しています。2023年の家庭用太陽光発電のFIT価格は16円/kWhであるのに対し、東京電力の従量電灯Bの電力量料金は30~40.69円となっています。
余剰買取で売電収入は減ったとしても、自家消費することで電気代の削減が大きくなるので、電気は売るよりも使う方がお得です。
全量買取のメリットとデメリット
全量買取のメリットは売電収入が多く得られる点です。投資用に太陽光発電設備を購入する場合は、全量買取が向いています。
特に大規模な太陽光発電設備の場合、土地が安く遮るもののない郊外が設置に適しているため、自宅や自社とは離れた場所に建設されることが多くなります。自家消費ができなくても、全量売電で売電収入が得られるのは大きなメリットです。
デメリットは、容量が50kW以上の大型産業用太陽光発電のみが対象となる点と、自家消費できない点です。しかし、発電設備の近くに自宅や自社がなければ関係ありません。
売電収入により元は取れる?
太陽光発電システムの初期費用は、売電収入と電気代の削減で回収していくことになります。本当に元が取れるのか、いつ元が取れるのかについて解説します。
出力制御されることによって売電収入が下がる可能性
出力制御とは、電気の需要と供給のバランスを保つために、送配電事業者(地域の大手電力会社)が発電所(発電事業者)からの出力を停止したり抑制することです。電力系統の受給バランスが崩れると、最悪の場合大停電を起こしてしまいます。
太陽光発電システムから電力系統への出力ができなくなると、出力制御されている間は売電することができないので、売電収入が減ってしまうことになります。
2015年より一部エリアから始まった出力制御ですが、2022年より全国の太陽光発電設備が対象になりました。(東京電力・中部電力・関西電力エリアでは50kW未満の発電所は対象外です。)
太陽光発電は出力制御の優先順位が低く、火力発電の出力制御・他地域への送電・バイオマスの出力制御を行ってもなお需給のバランスがコントロールできない場合にのみ実施されるので、頻繁に売電できなくなるということはないでしょう。
しかし、太陽光発電の発電量が多く、空調設備などの電力需要が少ない春や秋には、出力制御が起こる可能性もあります。
ちなみに、出力制御は容量の大きい太陽光発電所から実施されるので、家庭用太陽光発電の場合は心配ありません。
余剰買取の費用対効果
前述のとおり、電力会社の電気料金は値上がりし、固定価格買取制度の売電価格は下落しているため、自家消費を行う余剰買取の方が費用対効果は高くなります。
例えば、以下のような家庭で比較してみましょう。売電価格は2023年度の16円/kWhで計算しています。
電力会社 | 東京電力(従量電灯B) |
契約アンペア数 | 40A |
月間電力使用量 | 400kWh |
昼間使用量 | 240kWh(6割) |
太陽光発電システム容量 | 4kW |
月間発電量 | 360kWh |
シミュレーションすると以下のようになります。
太陽光無 | 余剰買取 | 全量買取 | |
電気代 | 15,437円 | 6,976円 | 15,437円 |
売電収入 | 0円 | 1,920円 | 5,760円 |
支出 | 15,437円 | 5,056円 | 9,677円 |
家庭用太陽光発電の余剰買取の費用対効果が高いとわかると思います。
全量買取の費用対効果
全量買取が対象の太陽光発電所は50kW以上と規模が大きく、太陽光発電投資に利用されることが多くなっています。
産業用太陽光発電(10kW以上)のFIT価格は9.5~10円と家庭用より安いですが、発電量が多く、FIT期間は20年と長くいため、長期間安定した収益を出すことが可能です。
さらに、中古の太陽光発電設備を購入すれば、運用を開始した年のFIT価格のまま売電が可能です。例えば、2020年に運用を開始した太陽光発電設備(50~250kW)の場合、は、残りのFIT期間の約17年間を、12円/kWhのFIT価格で売電できるので、さらに費用対効果が高いと言えるでしょう。
太陽光発電費用のまとめ
- 太陽光発電システムの初期費用は1kwあたり24~35万円程度
- 初期設置費用を下げるには相見積もりが最も効果的だと思われる
- 電力自由化になっているのでお得な契約先を選ぶ
- 10年ごとにパワーコンディショナーの交換費用1台当たり10~35万円程度や、その他のメンテナンス費用も想定しておいたほうが良い
- スマートメーターが導入され、10年ごとのメーター交換費用は不要となった
- 全量買取では消費税がプラスされて入金される
結果、私としては予算が許すのであれば新築の場合は太陽光発電を付けたほうがお得なのではないかと思います。太陽光発電の費用対効果だけでなく、家全体の維持費用などについてもよく検討の上、後悔のない選択をしてくださいね!