ガス会社と契約して家庭でガスを使用する場合は、都市ガスかプロパンガスのどちらかを使うことになります。普段あまり意識することはないかもしれませんが、都市ガスとプロパンガスには明確な違いがあるのです。
都市ガスとプロパンガスの違いを知らないからといって、問題が起きることはあまりありません。それぞれの種類に合ったガス機器をきちんと購入して使用すれば良いのです。
しかし、都市ガスとプロパンガスの違いを知っておくことで、ガス料金を下げて節約につなげられる可能性があります。
ここでは、意外と知られていない都市ガスとプロパンガスの違いを理解するため、それぞれの特徴や見分け方について解説します。
さらに、ガスの種類を変更する方法やガス料金を下げるためにできることもあわせてご紹介するので、参考にしてみてください。
都市ガスとプロパンガスの違い
- 料金制度
- 原料・成分
- 輸入国
- 供給方法
- 供給エリア
- 発熱量
料金制度
都市ガスとプロパンガスの大きな違いは料金制度でした。
都市ガスは2017年4月に自由化されるまで、政府の認可を必要とする規制料金だったのです。しかし、ガス自由化によって都市ガスも規制がなくなり、ガス会社が自由に料金を設定できるようになりました。
ただし、自由化されたからといって都市ガスの料金が大幅に下がったわけではありません。現状ではコストを劇的に下げるのは難しく、大幅な値下げを実現しているガス会社はほぼ見られないのです!
一方、プロパンガスは都市ガスが自由化される以前から自由料金です。政府による規制がなく、プロパンガスを販売しているガス会社が仕入れ価格や人件費といったコストと会社の利益を考えたうえで自由にガス料金を決められます。そのため、ガスの販売店が異なると料金も大きく異なるという状況がずっと続いているのです。
原料、成分
都市ガスとプロパンガスの違いは、原料や成分にもあります。
まず、都市ガスはメタンを主成分とする天然ガスを主な原料としているのが特徴。一方プロパンガスは、プロパンやブタンを主成分とする液化石油ガスを主な原料としています。プロパンガスはLPガスと呼ばれることもありますが、このLPとは「Liquefied Petroleum Gas」、つまり液化石油ガスのことなのです。
輸入国
都市ガスとプロパンガスは原料に違いがあるため、輸入国も異なります。
都市ガスの原料となる駅か天然ガスは、多くがオーストラリアから輸入されています。その後はマレーシアやカタールなどの国が続きますが、近年ではシェールガス増産によってアメリカからの輸入も増えているのが特徴。
それに対しプロパンガスは、アラブ首長国連邦やサウジアラビアなど中東の国から多くを輸入されています。しかし、都市ガスと同様近年ではシェールガス由来のものをアメリカから多く輸入するようになりました。
供給方法
都市ガスとプロパンガスは、供給方法にも大きな違いがあります。
都市ガスは、地下にあるガス導管を通じて契約者の家までガスを届けるのが特徴。一方プロパンガスは、契約者の物件にガスボンベを配置することでガスを供給しています。ガス会社の作業員が契約者の家までガスボンベを届けているため、各家庭でプロパンガスを使えるのです。
供給エリア
供給方法が異なるからこそ、都市ガスとプロパンガスは供給エリアも異なります。
先述のとおり、都市ガスを供給するためにはガス地下に埋められたガス導管が必要です。ガス導管を設置するためには多額の費用がかかるので、都市ガスは人口が多い地域でのみ供給されています。都市ガス用の道管が設置されているのは、日本の面積の約6%程度だと言われています。
それに対し、プロパンガスはガスボンベと簡単な設備があればどこでも利用できるのが特徴。そのため都市ガスのようにエリアの制限はなく、全国各地で供給されています。都市ガスの導管を設置するより、プロパンガスを配送したほうがコスパが良い地域も多くあるのです。
都市ガスの導管設置率は低いものの、都市ガスは人口が密集している場所で供給されるため、利用者数を比べるとプロパンガスよりも都市ガスのほうが多くなっています。
発熱量
都市ガスとプロパンガスの違いは、発熱量にも見られます。
都市ガスとプロパンガスを比べると、プロパンガスのほうが熱量は高いです。プロパンガスの熱量は都市ガスの2倍ほどあり、都市ガスとプロパンガスで同じ作業をする場合都市ガスはプロパンガスの2倍の量を使わなければなりません。
都市ガスとプロパンガスは原料も熱量も違うので、使用できるガス機器もそれぞれ異なります。そのため、都市ガス対応エリアからプロパンガスのエリアに引っ越す場合は、ガス機器を買い換えたり部品を交換して別のガスを使用できるようにしたりしなければなりません。
都市ガスとプロパンガスの料金はどちらが高い?
都市ガスとプロパンガスの大きな違いのひとつに、料金があります。
都市ガスとプロパンガスを比べると、プロパンガスのほうが料金は高いのです。ガス会社にもよりますが、プロパンガスは都市ガスの1.8〜2倍ほど高いことも珍しくありません。これは、プロパンガスの供給コストが都市ガスよりも高くなるからだと考えられます。
都市ガスは地下に埋められた導管を利用してガスを使うため、一度導管を埋め込んでしまえば多額のコストはかかりません。一方プロパンガスは、毎月1回ほど配送員がトラックにガスボンベを積み、各家庭に届けることになります。人件費をはじめとするコストがかかることから、プロパンガスの料金は都市ガスよりも高くなってしまうのです。
都市ガスとプロパンガスの見分け方
物件の外観を確認する
家庭で毎日ガスを利用していたとしても、都市ガスとプロパンガスの違いを日常で意識することは少ないですよね。都市ガスとプロパンガスの見分け方として、まず物件の外観を確認する方法があります。
物件の外観を見て、ガスボンベがあるかどうかを確認しましょう。ガスボンベが設置されていない場合は、導管からガスを供給する都市ガスを利用している物件です。ガスボンベが設置されている物件は、プロパンガスを利用しています。
物件の中身を確認する
外観だけでなく、物件の中身を確認することでも都市ガスとプロパンガスの違いを見分けられます。物件のなかでも、以下のものを確認してみましょう。
まずは、ガスメーターです。ガスメーターに液晶表示がない場合は都市ガス、液晶表示がある場合はプロパンガスを利用しています。メーカーや型式などによって異なるものもありますが、基本的には液晶表示で違いを見分けられるでしょう。
また、都市ガスとプロパンガスはガス漏れ警報器の取り付け位置も違います。空気より軽い都市ガスの警報器は、天井や天井の近くに設置されています。一方、空気より重いプロパンガスの警報器は、足元に設置されるのが特徴。
さらに、ガスホースの色でも違いを見分けられます。都市ガスのガスホースの色は白、プロパンガスのガスホースの色はオレンジです。
そして、ガス機器に貼られているシールも違います。都市ガスの場合は「12A」や「13A」、「都市ガス用」などと書かれており、プロパンガスは「LPG」、「プロパンガス用」などと書かれています。
都市ガスのメリットとデメリット
メリット
①プロパンガスよりも価格が安い傾向にある
都市ガスとプロパンガスはそれぞれ特徴に違いがあるため、メリットやデメリットも異なります。
都市ガスのメリットは、プロパンガスよりも価格が安い傾向にあることです。都市ガスは地下に埋め込まれた導管を利用してガスを供給するため、プロパンガスのようにガスボンベを各家庭に配送する必要がなく、配送コストがかかりません。その結果、料金を安く抑えられるのです。
②広いスペースが不要
都市ガスのメリットとして、広いスペースが要らないことも挙げられます。プロパンガスはガスボンベを使用してガスを供給するため、家庭ごとにガスボンベを置くスペースが必要です。都市ガスではガスボンベが不要なので、広いスペースがなくてもガスを利用できます。
デメリット
①災害時の復旧に時間がかかる
都市ガスのデメリットとして、災害時の復旧に時間がかかることがあります。
ガス導管から多くの家庭にガスを供給できるのが都市ガスのメリットですが、自然災害によってガス導管が破裂してしまった場合、復旧に時間がかかってしまいます。ガスが使えない期間が長引き、契約者が不便を感じてしまうこともあるのです。
②ガス会社の切り替えに多額の費用がかかる
都市ガスのもうひとつのデメリットは、ガス会社の切り替えに多額の費用がかかることです。
これまでプロパンガスを利用していた家庭で都市ガスを利用するためには、ガス導管からガスを供給するための工事が必要になります。ガス機器を買い換えるだけでなく大掛かりな工事が必要になってしまうため、その分費用も多くかかってしまうのです。
プロパンガスのメリットとデメリット
メリット
①災害に強い
プロパンガスのメリットは、災害に強いことです。
プロパンガスは各家庭にガスボンベを配送することによってガスを使えるようにしているため、都市ガスのように自然災害でガス導管が破損して復旧に時間がかかることがありません。複数の家庭に影響が出る大きな工事が不要で、災害が起きても速やかに復旧できます。
②導入時に工事費用がかからない
プロパンガスのもうひとつのメリットは、導入時に工事費用がかからないことです。
新たに都市ガスを使うためには、都市ガスの導管から自宅にガスを供給できるよう大掛かりな工事をしなければなりません。プロパンガスはガスボンベと簡易的なガス機器があれば利用できるので、工事費用を抑えて使うことができます。
デメリット
①都市ガスと比較して料金が高い傾向にある
プロパンガスのデメリットは、都市ガスよりも料金が高い傾向にあることです。
プロパンガスを取り扱っている会社は各家庭にガスボンベを配送しなければならず、配送コストが定期的にかかることからガス料金が都市ガスよりも高くなってしまいやすいのです。
②開栓手続き時に保証金が発生することがある
プロパンガスのもうひとつのデメリットとして、開栓手続きの際に保証金が発生することが挙げられます。
必ず必要になるわけではありませんが、開栓手続きをする際に保証金の支払いを求められるケースがあるため、注意しなければなりません。
ガスの種類は変えられる?
プロパンガスの料金が都市ガスよりも高いことから、プロパンガスから都市ガスに変えたいと考える人も多くいます。しかし、プロパンガスから都市ガスに変えるのは難しいです。
都市ガスのガス導管が通っていないエリアでは、都市ガスを利用できません。工事によって自宅まで供給管を伸ばせば都市ガスを利用できますが、多くの場合工事をすることで導管が他人の敷地を通ることになります。持ち主に敷地を通る許可を得るか、他人の敷地を通らずに導管を埋設するかしなければ、プロパンガスから都市ガスに乗り換えるのは難しいといえるでしょう。
ガスの種類を変えるデメリット
ガス機器を買い替えなければならない
ガスの種類を変えるデメリットとして、ガス機器を買い替えなければならないことが挙げられます。
都市ガスとプロパンガスでは、使用するガス機器が異なります。両者に互換性はないので、ガスの種類を変える場合は機器を買い替えなければならないのです。
工事費用や機器の改造費用がかかる
工事費用やガス機器の改造費用がかかることも、ガスの種類を変えるデメリットです。
プロパンガスから都市ガスに変える場合、自宅で都市ガスを使えるようにするために配管を取り付けなければなりません。配管を取り付けるための工事費用は都市ガスの導管から自宅までの距離によって異なりますが、10万円以上かかることも多いです。
これまで使用していたガス機器は、部品を改造することでガスの種類が変わっても使える可能性があります。しかし、その場合も費用がかかるのは変わりません。古いガス機器の改造には買い替えと同じくらいの費用がかかることもあるので、大きな負担となります。
ガスの種類はそのままで、料金を下げる方法
ガスを節約する
プロパンガスから都市ガスに変更できなくても、ガス料金を下げる方法はあります。まずは、ガスの節約を心がけましょう。使用するガスの量を抑えることができれば、ガス料金の節約に繋がります。
無理に節約して不便な思いをするのではなく、ガスを利用するシーンに無駄が潜んでいないか確認してみましょう。例えば、キッチンコンロのガスバーナー部分が汚れていると火力が弱くなり、熱効率が悪くなってしまうので、こまめに掃除するのがおすすめです。
ほかにも、シャワーを節水タイプに切り替えたり、コンロを使って料理するときに保温調理を活用したりすると、不便さを感じることなくガス料金を節約できます。
ガス会社を変更する
ガスの種類は変更できなくても、ガス会社の変更は可能です。都市ガスもプロパンガスも自由料金なので、販売会社によって料金が異なります。提供されているプランもさまざまなので、より料金を抑えられるガス会社やプランを選ぶと良いでしょう。
ただし、賃貸物件などではガス会社を自由に変更できないことがあるので注意が必要です。
プロパンガスを契約中の方は一括見積もりがおすすめ!
まとめ
都市ガスとプロパンガスは全くの別物で、特徴が大きく異なることをご紹介しました。都市ガスとプロパンガスには、それぞれにメリットとデメリットがあります。
特徴が違うからこそガスの種類を変更するのは難しいですが、種類を変えなくてもガス料金を下げる方法はあるため、取り入れてみてはいかがでしょうか。それぞれのガスの違いを知って、適切な方法でお得にガスを利用しましょう。