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ESGによって広がる太陽光発電システムへの投資・SDGsがもたらす脱炭素社会

ESG投資とは企業の財務状況だけの定量的な評価だけでなく、非財務状況に重点をおいた投資手法のひとつです。

ESGとは、環境(Enviroment)、社会(Social)、ガバメンス(Governance)の3つの頭文字を取った名称で、2006年に国連が機関投資家向けに提唱した国連 責任投資原則(PRI)がきっかけとなり世界的に広がりを見せました。

国内では環境保護ビジネス企業をはじめとした、脱炭素に取り組む企業の割合が増加しており、なかでも太陽光発電はその中心的な存在となっています。

当記事では、その太陽光発電システムのメリット・デメリット、また魅力や今後の動向について詳しく解説します。

1. ESG投資と国連責任投資原則(PRI)とは

ESG投資は年金基金など、巨額の資金を長期的に運用する機関投資家を中心に、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出のオポチュニティ(好機)を評価する投資手法として注目されています。

ESGという概念が知られるようになったのは、2006年に国連のコフィ―・アナン事務総長(当時)が機関投資家向けに提唱した国連責任投資原則がきっかけでした。

この国連責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)とは、投資にESGの視点を組み入れた機関投資家の投資原則で、投資家はこれに署名し、順守状況を開示、報告しなくてはいけません。

PRIの6つの原則
1.投資決定と意思分析のプロセスにESGの視点を組み入れる
2.株式の所有方針と所有慣習のESGの視点を組み入れる
3.投資対象に対し、ESGに関する情報開示を求める
4.資産運用業界において、本原則が広がるよう働きかけをおこなう
5.本原則の実施効果を高めるために協業する
6.本原則の活動状況や進捗状況を報告する

1.1 PRIの現状

PRIには、世界の1965の機関(資産運用規模約70兆ドル)が署名(2018年5月時点)しており、日本では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年に署名しています。

このほか、日本政策投資銀行(DJB)など63の機関が署名し(2018年8月時点)、2019年度末には大規模な機関投資家が署名を始めており、日本でも需要度が高まることが予想されています。

2  ESG投資とPRI、SDGsの3つの関係とは

(画像引用:https://www.gpif.go.jp/investment/esg/)

2.1 SDGs(Sustainable Development Goals:国連の持続可能型開発目標)

SDGsは国連加盟の193ヵ国全てが採択した貧困撲滅・格差の是正・気候変動対策など国際社会に共通の17の目標を達成することを掲げています。

その中のひとつとして、クリーンエネルギー(再生可能エネルギー)が組み込まれました。

SDGsの大きな特徴は、これらの課題解決の主体が民間機関にあるという点

つまり、企業はクリーンエネルギーの目標を達成するために、太陽光発電システムなどの設備を積極的に取り入れる必要があるのです。

日本でもクリーンエネルギーを経営戦略として取り組む企業が増え、事業拡大のチャンスと捉える動きが見られています。

PRIに署名した機関投資家は、ESGの環境・社会・ガバナンスの3つの原則を順守し、推進することで投資する企業からのリターンを期待します。

一方、企業は機関投資家から事業資金を集めることで、再生可能エネルギー等の事業増を図るというわけです。

機関投資家はPRIとSDGsの連携により、世界の17の目標を達成することで、持続可能な社会の創造を実現することを最終的な目標としています。

それによって、企業は機関投資家から調達した資金を投資し、太陽光発電システム事業などを拡大させることができます。

つまり、機関投資家はPRI(国連責任投資原則)に署名し、6つの原則を順守することでSDGsに取り組む企業にESG投資をおこないながら、持続可能な社会の実現に貢献できるのです。
【SDGsとは?】目的や実現したい未来について簡単にわかりやすく解説!

2.2 企業と投資家を結ぶ「価値協創ガイダンス」

ESG投資とPRI、SDGsの関係を構築する上で重要となるのは、機関投資家と企業のより深い理解であり、そのための共通のガイダンスが必要となります。

それが「価値協創ガイダンス」です。このガイダンスによって企業は機関投資家に伝えるべき自社の経営理念やビジネスモデル、戦略やガバナンスを情報開示し、投資家とのコミュニケーションの質を高めることが容易になります。

企業はガイダンスの各項目から、自社の強みや今後の戦略を説明する上で重要な項目を選択し、自らの企業価値をアピールすることが可能となります

3.パリ協定の目標達成を後押しするESG投資

環境省が行っている環境情報開示基盤整備事業では、ESG対話プラットフォームを投資家、企業の対話の場として提供し、双方の環境情報のやり取りを円滑化する取り組みを始めています。

この取り組みは2014年に技術実証を始め、パリ協定が発行された翌年の2018年に運用実証を開始しました。

今後はパリ協定開始の翌年にあたる2021年に、環境情報を軸とした非財務プラットフォームとして本格運用を始める予定です。

この取り組みによって、低炭素・脱炭素活動を含む持続可能な取り組みを行う企業へと投資家の資金が流れる仕組みを構築し、環境の情報開示と企業と投資家の対話を支援します。

3.1 地球温暖化の新しい取り組み「パリ協定」とは

パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。

SGDsに組み込まれている再生可能エネルギーの目標も、このパリ協定の目標達成を目指しています。

日本では、中長期計画として2030年度の温室効果ガスの排出量が、2013年度比で26%減になるように目標を定めました。

加盟国の中には、日本の目標は低いといった声もありますが、各国の目標は基準年度や指標がバラバラであるため、簡単に比較することは難しいといえます。

日本の目標は決して達成が楽な数値ではありませんが、政府と産業界とともに検討を重ね積算され、具体的な対策に裏付けられた実現可能な数値として設定されています。

3.2 企業の経済活動と両立した温暖化ガス削減を目指す

温暖化ガス削減目標を達成するための核となるのは、再生可能エネルギーの導入量を増やすことです。

政府では2030年度の電源構成を、再生可能エネルギー22∼24%程度、原子力を20∼22%程度、LNGを27%程度、石炭を26%程度、石油を3%程度に見直すとしています。

企業は、これらの目標を事業拡大の好機として捉えており、自社の排出量削減を目指すだけでなく、高機能素材や低炭素・省エネ製品の開発などを進めています。

4. ESG投資で持続可能な事業を拡大する企業

パリ協定で見るように、世界は低炭素・脱炭素に向けて動き出しています。

ESG投資を行う機関投資家も、再生可能エネルギーに取り組む企業に投資し大きなリターンを期待しています。

その逆に、温室効果ガスを大量に排出する石炭火力を投資対象から除外する、ネガティブ・スクリーニングをおこなうといった動きも見られています。

つまり、巨額の資金を運用する世界中の機関投資家は、再生可能エネルギー関連の事業など、ESG投資に優れてた取り組みをしている企業に積極的に投資をおこなうというわけです。

4.1 事業に使うエネルギー全てを再生可能エネルギーで調達するRE100

ESG投資を呼び込むための取り組みとして注目されるのは、事業に利用するエネルギーの全てを再生可能エネルギーで調達するRE100(Renewable Energy 100%)です。

RE100に加盟するための条件として、以下の4つのうち1つ以上に該当する必要があります。

  1. 世界的な企業、または国内で認知度や信頼度が高い企業
  2. 主要な多国籍企業
  3. 電力消費量が100GWh以上(日本企業は10GWh以上)の企業
  4. RE100の目的に貢献できる、特徴や影響力を持っている企業

2020年4月27日時点で、RE100に加盟している企業は世界で242社、日本では33社です。

RE100は、温室効果ガスの排出の低減を目指していることを投資家にアピールすることができる環境プロジェクトのひとつなのです。

4.2 中小企業にも求められるRE100

RE100に加盟できる企業は、上記した4つの条件のうち1つ以上に該当していなければいけないため、加盟する企業の多くは大企業です。

しかし、それらの大多数の企業には多くの取引先が存在し、それらの取引先にもRE100と同等の取り組みを求めています。

例えば小売店大手のイオンや、米国のアップルなどもそのひとつで、取引先を選ぶ基準としてもRE100への取り組みを加えています。

中小企業にとっては財務上の負担が大きくなる取り組みですが、ESG投資を呼び込めるといったポジティブな面もあり、積極的に取り組む中小企業が増えています。
RE100とは?日本の加盟企業からRE100の目的・概要までわかりやすく解説

5. ESG投資に占める太陽光発電システムの存在感

ここまで解説してきたように、企業がESG投資を呼び込むためにはSDGsに取り組んでいることが前提となります。

機関投資家としては、大きなリターンを得られることを期待しており、パリ協定で注目が集まっている再生可能エネルギー分野への投資を加速させています。

なかでも太陽光発電システムへのESG投資に意欲を見せる機関投資家は多く、企業も太陽光発電システム分野へ事業を拡大させています

環境省が2020年4月に発表した全国の金融機関にアンケート調査を行った結果でも、その傾向がはっきりと表れています。

このアンケート調査に回答した192の金融機関によると、ESGを考慮した融資の実績として、再生可能エネルギーが占める割合は89%(複数回答)にのぼっており、そのうちのほとんどが事業用の太陽光発電システムに充てるための資金でした。

5.1 融資判断に戸惑う金融機関

金融機関にとってESG要素を評価することは困難で、審査結果や債務区分に体系的に評価を反映させる方法が分からないといった意見もあります。

また、環境へのインパクトを把握するための知見が金融機関側に乏しく、評価のモニタリングができないといった声も聞かれます。

こうした諸問題に対応するためには、専門部署の創設と人員の確保、また効率的な情報収集がおこなえる体制づくりが求められます。

6. 太陽光発電システム市場への融資がSDGsにより再燃

近年冷え込んでいた太陽光発電システム市場でしたが、SDGsの広がりによって、大きなリターンが期待できる投資先として再び注目を集めています。

大規模太陽光発電システム(メガソーラー)を製造した企業は、一定の利益を得たのちに機関投資家へ優良なESG投資先として呼びかけをおこなっています。

機関投資家も、ESG投資のなかでも需要が高い太陽光発電システムには高い関心を示しており、双方にとって有益な取引といえるでしょう

6.1 不動産投資に近いメガソーラーへの投資

メガソーラーはオフィスビルなどの不動産投資に近く、売買の方法も似ています。

企業は売電で得られた収益の一部を投資家が得られるように、その権利を証券化して売却します。

この手法は、オフィスビルなどの不動産に見られる投資手法に似ており、不動産の場合は賃貸物件の家賃収入の一部を投資家に配当するのです。

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6.2 固定買い取り制度により安定した収益が見込める

メガソーラーへの投資の最大のメリットは、固定買い取り制度(FIT)によって、確実に収益を得ることができるという点にあります。

そのため、機関投資家は最小限のリスクで投資することが可能であり、証券を発行する企業にとっても売りやすいというメリットが生まれます。

つまり、投資家にとっては安定した利益が期待でき、企業にとっては建設費用を早期に回収することができるというわけです。

7.FIT制度を下支えする再エネ賦課金

再生可能エネルギーは、まだ発展途上にあるといえ、発電される電気も既存の発電システムのものに比べ割高になってしまいます。

そこで、太陽光発電システムなどの建設に必要な費用を国民が電力使用料の一部で負担し、システムの建設を促進する「再生可能エネルギー発電促進武課金(再エネ賦課金)」という制度が制定されました。

しかし、この制度は国民の家計への負担が大きく、再エネ武課金とそれに見合った脱炭素の成果に対する疑問の声が挙がっています。

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7.1 FIT法の問題点と改正のポイント

2012年に制定されたFIT法は、さまざまな問題点を解消するため2017年に改正されました。

改正のポイントは、以下の3つです。

  1. 再エネ武課金による国民への負担の増加
  2. 太陽光発電システムは日の出ている時しか発電できない
  3. 未稼働の施設が増加している

この問題点を解消するために、以下の取り組みを導入しています。

  1. 事業計画の確認により、経産大臣が新設施設が再エネ施設として適当かを認定する制度を制定
  2. 入札により買い取り価格を決定する
  3. 買い取り義務者を小売電気事業者から一般送配電事業者等に変更
  4. 申請事業者の国際的競走の状況や、省エネルギーの取り組み状況に応じて武課金を減免する

7.2 FIT法改正で求められる企業の責任

前述したように、国は再エネ設備の建設に対して新たに認定制度をつくり、建設済の設備を確認する方法から、事業計画の段階から確認を行う方法に変更しました。

これによって、企業には設備の適切なメンテナンスを計画に盛り込むことが求められるようになり、安定的な運転をおこなえる仕組みの構築が必要になりました。

また、FIT認定を受けたにもかかわらず、一定期間発電をおこなわない企業には買取期間が短縮されるなどのペナルティが科せられます。

7.3 電力の買い取り価格入札制度の導入

メガソーラーのように大規模な太陽光発電システムについては、買い取り価格の入札制度を導入し、企業の間の競争を促し国民負担を減らす考えを示しています。

7.4 再エネ導入を促進

パリ協定やSDGsを背景に、企業の再エネへの取り組みは加速しており、新たな収益事業の好機と捉えています。

また、機関投資家にとってもメガソーラーなどへのESG投資は、安定したリターンを得ることが期待できる投資手法として、ポートフォリオに積極的に組み入れる動きが見られます。

国でも再エネの導入を増やすことは、パリ協定の目標達成のためには必須の課題であると捉えており、設備の増設を優遇する施策をおこなっていく方針です。

8. 日本の機関投資家の取り組み

日本の機関投資家のなかで、巨額の資金を運用するユニバーサル・オーナーと呼ばれているのは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)です。

GPIFは国民の年金積立金を長期的に運用し、持続的かつ安定した投資によってリターンを得ることが求めらています。

そのため、投資先企業の環境、社会問題、ガバナンスなどによるネガティブな影響を最小化するためにESG投資をポートフォリオに組み入れています。

投資先企業は、SDGsによって環境、社会問題、ガバナンスに関わるさまざまな問題について主体的に取り組んでいるため、ネガティブ・スクリーニングによって投資対象から外れる企業を判断しやすくなるといったメリットがあります。

8.1 株式を対象としたESG指数・グローバル環境株式指数の採用

GPIFは株式を対象にした「ESG指数」と「グローバル環境株式指数」の2つの指数を採用し、気候変動を中心とした環境問題に取り組んでいくとしています。

企業が公開する情報などをもとに、低炭素・脱炭素への取り組みを評価する株式指数を5つ(総合型2つ・特定のテーマ型3つ)採用し、パッシブ運用をおこなっています。

ESG投資にはいくつかの投資手法がありますが、ESG指数を採用することによって、ESGの観点からみた基準に沿って評価銘柄をポートフォリオに組み入れることが容易になります。

グローバル環境株式指数では、石炭や既存の電力会社をネガティブに評価せず、ポジティブ・スクリーニングによる指数、業界内での絶対評価による指数によって銘柄選定をおこなうとしています。

8.2 温室ガス排出量による評価

温室効果ガスの排出量だけで見れば、太陽光発電システムを製造する企業や、発電に携わる企業の評価が高まるのは当然のことです。

しかしGPIFでは、サプライチェーンも含めた温室効果ガスの排出量を補足することには限界があり、むしろ同業種内での競争原理を働かせることによって、温室効果ガス排出量を抑制させることに意義があると考えています。

GPIFはネガティブ・スクリーニングによって、温室効果ガス排出量が多い企業を除外するのではなく、ESGやSDGsといった仕組みに積極的に取り組んでいる企業に対して投資をおこなっていきます。

まとめ

メガソーラーをはじめとした太陽光発電システムは、温室効果ガスの排出量削減に有効なシステムであり、それはESG投資の理念にも合致する投資対象になっています。

また、さまざまな企業がSDGsを取り込むことにより、低炭素・脱炭素の動きは加速し、太陽光発電システムの需要も伸びていくことが予想されます。

GPIFも今後の投資対象としてESGを考慮した投資を推進する考えを示しており、その対象は大企業だけでなく、上場企業全般を対象としていく方針です。

太陽光発電システムとESG投資、SDGsには密接な関係があり、特に気候変動への関心が高まるなかでの投資対象として、再生可能エネルギー分野の存在感は増していくといえるでしょう。

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