産業用太陽光発電は、投資目的として企業や個人投資家から注目を集めています。
産業用なので規模が大きい分、設置費用・初期費用も高額になります。
それでも固定価格買取制度という国の後ろ盾があるため、初期費用を全額回収して利益を出すことができ、安心して投資を始めることができるのです。
この記事では、産業用太陽光発電が投資として成り立つ仕組みや設置価格・売電価格、運用シュミレーションなどを例を挙げて解説します!
- 産業用太陽光発電の設置価格と売電価格
- 産業用太陽光発電の運用シミュレーション
- 産業用太陽光発電のメリット・デメリット
- 新規物件と中古物件はどちらがお得なのか
産業用太陽光発電とは?
【基礎知識】太陽光発電設備の仕組み
太陽光発電は、太陽の光を利用して電気を作り出す発電システムのことです。
パネルに太陽光が当たることで直流の電気が作り出され、それをパワーコンディショナーという変換器を使って交流に変換します。交流への変換は、家庭でも使える電流の形にするためです。
パワーコンディショナーによって変換された電流は、自社及び自身で所有している設備で消費するか、蓄電もしくは売電することになります。
産業用太陽光発電のシステム容量
産業用太陽光発電は、システム容量が10kW以上の規模の大きい太陽光発電です!
住宅の屋根に太陽光パネルが並んでいる光景をみたことがある方もいるかもしれませんが、産業用太陽光発電は屋根や屋上ではなく、空き地に架台を立ててパネルを並べます。これを一般的に野立て太陽光発電と呼びます。
産業用太陽光発電は投資ができる
太陽光発電投資とは、太陽の光エネルギーで発電した電気を電力会社に売ったお金を利益とする投資方法です。
後述する固定価格買取制度のもと運用していく投資なので、安定して長期に渡って利益を得られるため、堅実・安全に資産運用したい方から人気を集めています。
固定価格買取制度(FIT制度)が適用される
固定買取制度(FIT制度)とは国が電力会社に対して太陽光で発電した電気を一定期間、決められた金額で買い取ることを義務付けた制度です。
産業用の場合は20年間、固定価格での買取を国が保証しています。
産業用太陽光発電の買取価格推移
産業用太陽光発電の売電価格の推移は以下の通りです。
期間 | 売電価格 |
2014年 | 32円+税 |
2015年 | 27円+税 |
2016年 | 24円+税 |
2017年 | 21円+税 |
2018年 | 18円+税 |
2019年 | 14円+税 |
2020年 | 12〜13円+税 |
2021年 | 11〜12円+税 |
2022年 | 10〜11円+税 |
2023年 | 9.5〜10円+税 |
2020年より10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電と50kW以上250kW未満の高圧太陽光発電で異なる買取価格がつけられるようになり、買取方法も余剰売電と全量売電が適応されるようになりました。
産業用太陽光発電システムの設置費用・初期費用
50kw程度の設備を設置する場合は、1,500〜2,000万円程度の費用がかかります。
また、一般的に規模が大きくなればなるほど1kWあたりの設置費用単価は安くなります。
例えば、50kWで1,500万円の太陽光発電と、100kWで2,900万円の太陽光発電を比較すると、200kWのほうが初期費用が高いので、なるべく初期費用を抑えたい方は躊躇するかもしれません。
しかし、1kWあたりの費用で考えると、
1kWあたり30万円と、1kWあたり29万円となり、200kWの太陽光発電の方が安いということがわかります。
つまり、初期費用を抑えることができるのに加え、発電量は2倍になるので収入も増えるというわけです。
太陽光発電の購入を検討する際は、どのくらいの収益を期待し、どのくらいの費用を投資できるかを考慮しつつ、1kWあたりの費用単価で比較するようにしましょう。
初期投資の内訳は主に以下のようになります。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナー
- ケーブル
- その他周辺機器や設備
- 設置工事費
- 契約にかかる諸費用
産業用太陽光発電を始める4つのメリット
①売電収入
余剰売電のみの住宅用太陽光発電に対して、全量売電のできる産業用太陽光発電は利益額が大きいです。
2020年度の調達案から産業用太陽光発電でも50kW未満の発電所は余剰売電となったため、投資目的に産業用太陽光発電を新規で設置しようと考えている方は50kW以上のシステム容量の発電所の設置がおすすめです。
また、規模が大きいほど1kWあたりの費用が安くなるので、50kW以上の太陽光発電の方が利益率が良いです。
②長期運用ができる
ソーラーパネルの寿命は約30年と言われています。30年というのはあくまで目安で30年以上稼働している太陽光発電所もあります。
固定価格買取期間は20年間ですが、21年目以降も継続して発電することができます。
(参考:太陽光パネルの寿命はどれくらい?パネルの種類によって経年劣化に差が出る!|土地付き太陽光のソルセル)
③環境に優しい
二酸化炭素を発しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用した発電は、石炭や石油を利用した火力発電に比べて地球環境にとても優しい発電方法です。
企業や法人で太陽光発電を所有することで、CSR活動(企業が利益だけでなく、法人として社会的影響に責任を持って良い影響を及ぼす活動)として社会に良いイメージを与えられたり、エコ活動の一環になります。
実際、ソフトバンクやオリックスといった大手企業でも太陽光発電を所有しています。
④節税対策としても活用でき、消費税還付も受けられる
太陽光発電は償却資産なので減価償却の対象となり、節税対策としても有効的です。
減価償却とは、経年劣化する資産を取得した際、取得した費用を減価償却費として法定耐用年数に分けて経費で処理することを指します。
その分所得が少なくなるので、納税額を減らすことができます。
(参考:【節税効果抜群!】太陽光発電における減価償却・特別償却とは?知らないと損!|土地付き太陽光ソルセル)
また、太陽光発電も消費税還付が受けられるので、初期費用に応じて数ヶ月後に消費税が戻ってきます。消費税還付は知らない人が多いですが、知らずに受け取らないのはかなりもったいないので、事前に確認しておくようにしましょう。
産業用太陽光発電の3つのデメリット
①初期費用が高額
規模の大きい産業用太陽光発電は、どうしても初期費用が大きくなってしまいます。
しかし、固定価格買取期間中に初期費用を回収することができるため、実質初期費用ゼロ円という考えもできます。
また、太陽光発電の場合、固定価格買取制度がありローンの返済が滞るリスクが少ないという点から、多くの金融機関では太陽光発電事業者向けのソーラーローンなどの融資を実施しています。
融資については以下の記事で詳しく解説しているので、融資を受けて初期費用を準備しようと考えている方はチェックしておきましょう。
②設備が故障してしまう可能性がゼロではない
太陽光発電は屋外に設置しているため、どれだけ丁寧に管理していても何らかの理由で故障をしてしまう可能性があります。
太陽光発電設備自体の故障であればメーカー保証が適用されますが、メーカー保証の適用外であったり保証期間が過ぎていると、修理費が自己負担になってしまいます。
しかし、万が一に備えて保険に加入しておけば、補償をうけることができるので、運用期間が長期にわたる太陽光発電の維持管理の面では安心です。
③メンテナンス費用や税金がかかる
太陽光発電を運用すると、設備の管理や点検、故障した機器の修理・買い替え費用、固定資産税などが必要になります。
必要な設備が多いだけにメンテナンス費用がかさむのは仕方がありません。
しかし、税金やメンテナンスを考慮しても、10年前後で初期費用の回収ができ、かつ利益を出すことは十分可能なのでそれほど重要視する必要はないでしょう。
メンテナンス費用・ランニングコストについては次の章にて詳しく解説していきます。
太陽光発電のメンテナンス費用・税金などのランニングコスト
産業用太陽光発電にかかるメンテナンス費用や税金などのランニングコストは以下の通りです。
- 監視システム通信費:1〜3万円/年
- パワコン電気代:1〜3万円/年
- メンテナンス・土地管理費用:1〜3万円/年
- パワコン交換費用:30〜40万円/10〜15年 最終的に30万円と考えると、1.5万円〜2万円/年
- 保険料:1〜2万円/年
- 土地/設備への税金:10〜20万円/年
太陽光発電は、「メンテナンス不要の投資」と言われることもありますが、それは嘘です。
屋外に設置しているため、台風や地震などの自然災害の影響を受けてしまったり、砂や鳥のフンなどでパネルが汚れ発電量が低下してしまうこともあります。
しっかりと利益を出すためにはメンテナンスが必要不可欠です。
太陽光発電投資における初期投資回収期間
産業用太陽光発電投資の場合、約8〜12年で初期費用は回収できると言われています。
土地面積や設備メーカー、発電効率などによって期間の差が生じますが、10年前後を目安に考えておくとよいでしょう。
金融機関から融資を受けてフルローンで太陽光発電を購入した場合は、上記の期間プラス2年程度かかります。
【規模別】2022年の売電価格で産業用太陽光発電の運用シュミレーション
運用シュミレーションを発電規模別にご紹介します。ご自身の所有する土地面積などと比較しながら実際のイメージの参考にしてみてください!
ちなみに、下記シミュレーションでは2022年度の売電価格(50kW以上250kW未満:10円)で計算しています。
設備価格の1kWあたりの平均価格
設置規模 | 設備費用(平均) |
10〜50kW | 約28.7万円/1kW |
50〜500kW | 約25.5万円/1kW |
1kWあたりの運転維持費用(ランニングコスト費用)
設置規模 | 運転維持費用(平均) |
10〜50kW | 5万7000円/kW/年 |
50〜500kW | 4万4000円/kW/年 |
運用シュミレーション
年間発電量の計算方法
太陽光発電の年間発電量の計算方法は以下のようになります。
この計算式を元に野立て太陽光発電を設置した場合のシミュレーションをしていきましょう。
野立て産業用太陽光発電50kW設置した場合
設置容量 | 46.24kW |
設置条件 |
|
年間売電収入 | 589,610円 |
表面/利回り | 5% |
※損失係数0.85で計算
20年間の運用期間中に約1,200万円の売電収入が得られる計算となります。
産業用太陽光発電は今後どうなっていく?20年後も運用可能?
これから購入するなら新規より中古太陽光発電
FITが終了してからも、20年のFIT期間が経過していなくても中古太陽光発電として売り出されている物件が多くあります。売電価格が30円台のときにFIT認定を受けた物件も多く、初期費用を抑えながらも利益を確実に得ることができます。
中古太陽光発電は発電や売電の実績があるので、太陽光発電を新設するのに比べて利回りや発電量の予想がしやすくシミュレーションにズレが生じにくいことや、購入後すぐに売電収入を得られるというメリットがあります。
固定価格買取期間終了後も売電できる
固定価格買取期間は20年間ですが、それ以降も売電を継続することができます。
ソーラーパネルの寿命が30年と言われていますので、21年目以降も10年ほどは継続して売電が可能です。
ただし、国が定めた固定価格ではなく各電力会社が独自に決めた価格になるため、FIT価格よりは売電価格が安くなってしまうことは避けられません。
政府が発表した第5次エネルギー基本計画では以下のように述べられています。
将来的に大型電源として活用を進めるため、FIT制度における中長期的な価格目標(事業用太陽光発電の発電コストの水準が、2030年に7円/kWhとなることを目指す等)の実現を目指し、さらなるコスト低減を進めていくことが 必要である。
(出典:第5次エネルギー基本計画)
メンテナンス費用などを考えて、ある程度の利益が出る額でなければ太陽光発電を続けるメリットがなくなってしまうので、ギリギリ利益が出るような額になるのではないかと予想されており、その価格は8〜10円になるのではないかと考えられています。
ちなみに住宅用太陽光発電の卒FIT価格は8円ほどで推移しています。
太陽光発電所の廃棄問題が起こる【撤去費用はいくら?】
使用済みの太陽光発電設備は産業廃棄物として処分されます。
ただし、ソーラーパネルによっては鉛などの有害物質が使用されているものがあり、適切な処理が必要になるため、業者に廃棄を依頼しなければなりません。
未だ、産業用太陽光発電を撤去したという例はそこまで多くないので、具体的な費用は分かりませんが、50万円ほどかかると予想しておけばよいでしょう。
太陽光発電の定期報告では廃棄費用に関する項目もあり、太陽光発電システムの廃棄費用を積み立てておくことも太陽光発電所有者の義務だとされています。
まとめ
産業用太陽光発電投資には堅実なキャッシュフローが望め、損をする確立はかなり低いです。
「ハイリスク・ハイリターンで一攫千金!」ではなく、「堅実に将来のための貯蓄をしたい……!」という方には最適な投資方法です。
20年の長期戦にはなりますが、それよりも太陽光発電の魅力は大きく勝ると言えますね!