太陽光発電の性能などについては、常識的な考えが当てはまる部分と、当てはまらない部分があります。
また、日照時間についても想像と違うデータに驚かされることがあります。
代表的な例でいうと、沖縄は太陽が燦々と降り注いでいて、太陽光発電にはもってこいの場所ではないかと思われがちです。また、北海道のような寒い地域は太陽光発電には不向きと考えている方もいるでしょう。
果たしてそのイメージは正しいのでしょうか?
そこで、沖縄の日照時間と北海道の気温差による発電量の関係性や、ソーラーパネルの意外な弱点について探ってみました。
太陽光パネルは気温で発電量が変わる?
気温が高い夏の日の方が多くの電気を発電すると思っている方が多いですが、実際にはそういうわけではありません。
太陽光発電で発電量を増やすためには、気温というよりも日照時間が重要です。
実は、太陽光パネルは高温に弱く、気温の高い日が続くと発電効率が落ちる傾向にあります。
なぜなら、太陽光パネルの表面温度が上がると熱損失が生じるからです!
太陽光パネルが熱に弱い理由
太陽光パネルは表面をガラスでカバーしていますが、太陽電池の部分はシリコン(半導体)でできています。シリコンは、高温になると半導体の性能が著しく低下するという性質を持っています。そのため、ソーラーパネルの表面温度が日照などで60度や70度と高温になるにつれて、発電効率が著しく低下してしまうのです。
また、太陽光パネルの多くは、日本の平均気温である25℃を基準にして設計されており、25℃から1℃気温が上昇するごとに、約0.4〜0.5%の発電効率が低下すると言われています。
つまり、平均気温よりも10℃気温が上昇した35度の場合、発電効率は4〜5%低下することになります。
近年の日本では、本州でも最高気温が35度に達する地域が増えているので、太陽光パネルがダメージを受けて発電効率が低下しやすい状況になっています。
暑さに強い太陽光パネルはないの?
太陽光パネルが研究・開発が進められており、高温に強い太陽光パネルも登場しています。
現在注目されている太陽光パネルの中に、HIT(ヘテロ接合型ソーラーパネル)というパナソニックが販売している太陽光パネルがあります。このパネルは、アモルファスシリコンという物質を従来のシリコン素材に結合させたパネルで、真夏の高温時でも安定して発電することが可能です。
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ちなみに、夏場の太陽光パネルはの表面温度は、気温に30~40度プラスした温度になります。例えば、気温が35度の場合、太陽光パネルの表面温度は約65度付近まで上昇します。この温度では、シリコンタイプの太陽光パネルは発電効率を維持することができませんが、HITであれば耐えられます。
気温の高い地域ではこのような暑さに強い太陽光パネルを設置することで発電効率が下がりやすという問題をクリアしましょう。
沖縄県は最高気温が全国平均よりも高い?発電効率が下がる?
沖縄は年間を通して暖かいイメージがありますよね。
となると、先ほど説明したように発電効率が悪いのではないかと思うかもしれませんが、夏場の沖縄での発電量は全国平均を大きく上回っています。
この要因として、極端な気温上昇が起こりにくいことが考えられます。
沖縄の最高気温が本州や北海道、九州や四国よりも低いなんて嘘のような話ですが、沖縄は海に囲まれているため、真夏に極端な気温上昇がなく、熱損失が生じにくい環境です。
また、年間を通じて温暖な気候であるため、太陽光発電にはとても向いている地域と言えます。
実際、沖縄で35℃を超える真夏日はほとんどありません。
ただし、沖縄の場合は強烈な台風が到来するため、豪雨・強風に耐える太陽光発電の設置が必要になります。
また、強風だけでなく海から吹き付けてくる潮風の被害対策も必要になります。太陽光発電を設置する際には、塩害耐性の認証を取得しているメーカーを選択することや、塩害を防止するために錆びにくいステンレス鋼などで骨組みを作るといった工夫が必要です。
さらに塩害は発電効率を低下させるだけでなく、太陽光発電設備そのものを故障させてしまう可能性や火事のリスクがあるので、台風後のテスト稼働には注意しましょう。
沖縄の日照時間は短い?
沖縄は年間を通じて本州などよりも日照時間が長いと思われていますが、意外なことに冬場から初夏にかけての日照時間は全国平均を大きく下回っています。
特に1月から4月の半ばにかけては、全国平均よりも平均数時間も日照時間が短いです。その理由として、冬から春先にかけては、晴れの日が少ないという点が挙げられます。
しかし、沖縄の日照時間は5月から10月にかけて全国平均を大きく上回ります。
全国平均の日照時間は、5月と11月を頂点とするM字形の折れ線グラフを描きます。
(出典:気象庁|過去の気象データ検索)
一方、沖縄では7〜10月を頂点にした山の形で折れ線グラフが推移します。特に7月は全国平均の2.5倍もの日照時間があります。
(出典:気象庁|過去の気象データ検索)
沖縄での年間の日照時間は全国平均を下回るものの、6月から10月にかけての夏の間は全国平均の日照時間を上回るため、合計すると沖縄の発電量は全国平均よりも多くなります。
沖縄県で太陽光発電を設置した際の発電量と売電収益!おすすめの施工会社も
北海道などの寒冷地は気温よりも雪に気を付ける
高温になると電気変換のロスが増して熱損失が生じ、発電量が低下すると前述しましたが、気温が低い場合はどうなのでしょうか。
太陽光パネルの性質にもよりますが、ほとんどの場合、寒い気温での発電効率にはさほど影響がないことがわかっており、猛暑が続く関東や関西に比べて、東北や北海道の方が太陽光発電には向いていると言えます。
実際、北海道で夏と冬の発電量を比較した場合、冬の季節の発電量の方が夏場よりも多いです。効率よく発電するためには気温の低い北海道のような気候が適してるということがわかります。ちなみに、札幌の1年間の平均発電量が6,000kWhであるのに対して、東京では5,600kWh、仙台では5,800kWh、大阪でも5,800kW、h福岡では5,600kWhというデータがあります。
ただし、北海道などの寒冷地で太陽光発電を運用すると積雪量の多さがデメリットになる可能性もあります。太陽光パネルの全面が雪で覆われると、発電はできません。そのため、雪を積もらせたままにしてしまうと、年間の発電量が日照量の短い地域よりも低下することがあります。
とはいえ、太陽光パネルは発電する際に熱を発するので、基本的に表面の雪は溶けて滑り落ちます。
雪国で太陽光発電をする場合は、雪が滑り落ちやすい角度でパネルを設置するようにしましょう。
太陽光発電量と積雪の関係は以下の記事で解説しています
雪国で太陽光発電の稼働はアリナシ?積雪がもたらす被害と万全な対策
【まとめ】年間発電量で考えると北国の方が有利
発電量を増やすためには、気温が高く温暖な沖縄や九州地方などの「南国」が有利で、雪が積もる寒冷な北海道や東北地方など「北国」は不利だと思われていることも多いです。
しかし、実際には気温よりも発電量が重視され、その発電量も月々の発電量ではなく、年間の発電量によって向き不向きが考慮されます。
南国では日射量の多さで発電量が増えるイメージですが、実際は太陽光パネルの表面温度が仕様基準よりも高温になり、変換効率が落ちるので減衰ロスが生じます。
一方、北国では気温が低く日射量もさほど多くありませんが、太陽光パネルの仕様基準より表面温度が上がりにくい気候なので、減衰ロスが少なく、高い発電効率を維持できる場合もあります。
これらのことを考えると、南国と北国の間では年間の発電量において大きな差はないと考えられます。
つまり、太陽光発電の設置を検討する際は、「気温が高そう」「日射量が多そう」とイメージで判断するのではなく、正確な日照時間のデータや年間の気温変化、台風や雪などの自然災害も合わせて、どこに設置するかを考える必要があります。
とはいえ、基本的には日本中どこでも十分な年間発電量が確保できるため、今住んでいる地域を気にして太陽光発電設備の設置を考えるよりも、設置後の運用方法を検討する方が建設的です。