太陽光発電システムを一度設置したら、寿命・故障などの事象が起きるまでメンテナンス(維持管理)は必要ないという方がいますが、決してそうではありません。
発電量を維持し、長く安全に使うためには、設置後も継続的なメンテナンスが必要になります。
身近な家電で例えると、冷蔵庫や洗濯機、掃除機など家電製品の定期的に掃除などメンテナンスを行うことで、耐用年数を延ばすことができますよね。
逆に言うと利用方法やメンテナンスの状況によって、寿命を一気に縮めてしまう可能性もあります。
つまり、太陽光発電も利用方法や定期的なメンテナンスによって、発電効率を維持しながら長期的に利用できる期間が変わります。
そこで今回は、太陽光発電のメンテナンス費用相場やメンテナンス業者を選ぶ際のポイントなど、「メンテナンス」に焦点を絞って解説していきます。
太陽光発電のメンテナンスの基本【なぜ必要なのか?】
太陽光発電のメンテナンスの料金相場などについて知る前に、メンテナンスの基本である「なぜ必要なのか」という点を改めて整理します。
太陽電池・太陽光パネルのメンテナンスは個人では難しい
太陽光発電を長く使っていきたいのであれば、素人では気づきにくい異変などをチェックしてもらうためにも業者に定期メンテナンスを依頼する必要があります。
そもそも、太陽光発電システムは個人で設置するのが難しい機器であり、内部動作が目に見えるものではなく、日々の生活に直結するものでありません。それだけに、不具合や故障に気づかない方も多いです。
中には、業者による定期メンテナンスの際に初めて気付いたといったケースもあります。
内部モニターで毎日の発電量を常にチェックする場合、特に理由もなく大幅に発電量が低下するなどの異常事態にはすぐに気づくことができるかもしれません。
しかし、太陽光発電にそれほどの知識もなく、電気料金の増減にもそこまで関心がない方であれば、異常が起きていても気づかないといったことも十分に考えられます。
通常使用における不具合や故障は、保証期間内であれば販売店に連絡すると修理してもらえます。保証内容は太陽光パネルのメーカーなどによって異なります。詳しくはこちらの記事をチェックしてみてください。
太陽電池モジュールは外部要因で発電効率が落ちる
太陽電池モジュールは太陽の光を吸収し、吸収した太陽光エネルギーを電気エネルギーに転換する装置です。太陽光を電気に変換させる太陽電池はガラスなどの透明なカバーで保護されています。
太陽電池モジュールのガラスが汚れで曇ったり、傷がついて擦りガラスのようになったとしたらどうなるか想像できますか?
この場合、当然のことですが光が通りにくくなります。
光が通りにくくなると、太陽電池が光を吸収しにくくなり、発電効率(エネルギー転換効率)が悪化します。
とはいえ、太陽光発電システムの中でも太陽電池モジュールは、住宅用太陽光発電であれば屋根の上に設置されたり、産業用太陽光発電であれば設置される太陽光パネルの枚数が多すぎるので、個人で毎日チェックするのは難しく、一度設置したらそのままメンテナンスせず放置してしまう所有者も多いようです。
しかし発電効率が落ちれば、本来得られた電気を利用出来なくなるので損失を発生させてしまいます。
売電収入で考えると、10,000円の売電収入が得られるはずが、8,000円になってしまうということです。こういった損失をなくすためにはメンテナンスが欠かせないのです。
太陽光発電システムはメンテナンスフリーではない
太陽光発電はメンテナンスフリーだと言う方もいますが、決してそうではありません。
他の家電製品と同様、何もせず放置しておいて良いわけではなく、可能であれば毎月稼働チェックをし、定期メンテナンスを行うことで太陽光発電システムの長期運用が可能になります。
毎月のメンテナンスが無理でも、遠隔監視システムを設置して状況を把握したり、毎月の売電収入を見て普段と変わりないかをチェックすることが必要です。
そうしないと宝の持ち腐れ、さらに言えば、せっかく電気料金を低減しようとシステムを設置したのに逆に損をしてしまう可能性もあります。
異常を放置しておくと発熱や漏電から火災につながることもある
機器の故障や異常による発熱や発火は、パソコンやホットカーペットといった電気製品でも起こりうることです。太陽光発電システムは大型機器であるだけに、仮に火災となった場合、被害規模も大きくなる可能性があります。
人命にも関わる問題は、防ぐことができるうちに準備しておくことです。そのためには、信頼のおけるプロによる定期メンテナンスは必要でしょう。
長寿命の太陽電池モジュールといっても故障が起きる可能性がある
太陽電池モジュールは、機械的な故障は少ないものの、高温や外部からの強い力の影響で故障することがあります。
夏の直射日光を浴びる屋根は、表面温度が75度にも達すると言われており、これによって内部のはんだ付けが剥がれてしまったり、熱を持ったりすることで不具合や故障が起こってしまう可能性もあります。
さらに太陽電池モジュール自体が丈夫であったとしても、他の機器をつなぐ配線に問題が起きることもあります。
太陽電池モジュール自体も、落雷による破損うあ大量の積雪によるたわみ、潮風によるサビ、地震によるガタつきといった不測の事態によって汚損することも考えられます。
太陽光発電のメンテナンス・点検の種類・内容
住宅用太陽光発電システムの場合、「定期点検」と「スポット点検」の大きく2種類に分けられます。
定期点検
定期点検とは、太陽光発電システムに異常を感じていなくても、メーカー推奨や法律に基づいて定期的に行う点検のことです。以下のような点を確認してメンテナンスが行われています。
- 太陽光パネルの破損や汚れ
- 架台のボルトなどのゆるみやサビ
- ブレーカー・パワーコンディショナーなどの配線設備
- 太陽光を妨げる雑草などの周辺環境
目視では、太陽光パネルの破損や汚れはないか、ボルトにゆるみはないかなどを確認します。鳥の糞やゴミがパネルの上にあると、汚れた部分が高温になってしまい故障の元になってしまいます。また、パネルを地面に設置している場合は、周辺の草刈りも必要です。
さらに、目視では分からないパワコンや電気配線などの不具合がないか調べるため、精密点検を行います。専用の機器を使って数値を測定したり、サーモグラフィで異常な高温になっていないかを確認したりして太陽光パネルやケーブルの抵抗を点検し、漏電や感電といった故障を発見・防止します。
スポット点検
スポット点検とは、定期点検とは別に依頼して、目的を持って行う点検です。
「発電量が急に下がった。」など、何らかの不具合を発見したけれども原因が分からない時の原因究明などに依頼します。症状に合わせて、原因箇所となりうる部分を重点的に点検していきます。
定期点検と同じ業者に依頼しても構いませんが、他の業者に依頼して比較することも可能です。
太陽光発電の保証内容・メンテナンス費用相場
メンテナンス費用は1回5~10万円が相場と言われています。屋根に太陽光パネルを設置していて、足場を組む必要があると、割高になる可能性が高いです。
基本的に、保証期間内のシステム自体のトラブルによる故障は無料で交換や修理をしてもらえます。無料の保証内容だけではなく、有料で保証期間を伸ばしたり保証内容を追加することが可能です。
シャープ
システムの保障期間 | システム丸ごと10年(有料で15年保証有) |
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含まれない物 | ・モニター ・ケーブル ・架台 ・電力センサー ・開閉器 ・ストロングコンバーターも10年(有料15年) |
条件・その他 | 設置後一ヶ月以内に申し込み |
京セラ
システムの保障期間 | システム全体10年(有料15年) |
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含まれない物 | モニターは製造元の機器保証(1年または2年)のみ |
条件・その他 | 火事や台風等の被害も保証対象になる場合有 |
パナソニック(サンヨー)
システムの保障期間 | システム全体10年(システム15年・出力20年のモジュールあり) |
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含まれない物 | モニターは1年保証 パワコン収納箱 ・モニタリングアダプタ ・蓄電関連品は対象外 |
条件・その他 | 登録施工店による設置工事が前提・自然災害への補償制度も有 |
ソーラーフロンティア
システムの保障期間 | パネル20年・周辺機器10年 |
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含まれない物 | モニター2年 ケーブル・架台は対象外 |
条件・その他 | 設置後1・5・9年の定期点検を受ける |
サンテックパワー
システムの保障期間 | パネル25年 パワコン・接続箱・ケーブル10年(有料15年) モニター2年 |
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含まれない物 | 記載なし |
条件・その他 | 総合補償制度(自然災害・屋根漏水補償)有 |
太陽光発電のメンテナンスは個人でもできる?依頼した方が良い?
定期メンテナンスや保証などを事前に業者と契約しておいて、メンテナンス自体はプロに任せることが、太陽光発電システムを長持ちさせる一番の方法です。
太陽光発電システムの設置をした業者がメンテナンスのサービスを行っていれば、一貫して依頼すると良いでしょう。アフターサービスが充実した優良業者を探すには一括見積もりサイトを利用するのも一つの手です。見積もりを取って、メンテナンスについての質問をすれば一石二鳥ですよ。
また、メーカー保証内容には各メーカーで違いがあります。これから太陽光発電を設置する方は、設置する機器のメーカーの保証内容・メンテナンス費用を詳しく確認・比較することが大切です。
メンテナンスを素人が行うと、破損・故障の原因になるだけでなく、メーカー保証の対象外になってしまう場合も考えられます。また、高所からの転落や感電の危険もあります。
太陽光パネルの汚れは、雨である程度洗い流されるように設計されているので、頻繁な清掃は不要です。個人での対処は、パネルの上に大きなゴミや枯れ葉がある場合に、取り除くくらいで十分でしょう。ただし、高所作業は危険なので無理をせず、パネルを傷つけないように気を付けて下さい。
太陽光発電のメンテナンスに関するよくある質問
太陽光発電のメンテナンスを行う際に、気になる点についてまとめました。
太陽光発電システムのメンテナンスは義務?
2017年4月1日に改正FIT法(固定価格買取制度)が施行され、住宅用太陽光発電設備もメンテナンスが義務化されました。
改正前には、50kW未満の太陽光発電設備の場合、指定した条件を満たしていれば、保守点検・維持管理をしなくてもFIT制度を利用することができました。
しかし、今後は法律によって義務化されているため、保守点検を行わなければ、FIT認定が取り消されて売電収入が得られなく可能性もあります。
太陽光発電システムのメンテナンス業者はどう選べばいい?
一般的には、太陽光発電システムを購入・設置した業者に引き続きメンテナンスを依頼できます。契約時にメンテナンスをサービスで付ける業者もありますし、施工内容を把握している会社で対応してもらえるなら安心です
太陽光発電システムの設置業者を選ぶときには、これから先長い付き合いになるということを考慮して、アフターサービスについてもしっかりチェックする必要があります。
太陽光発電システムのメンテナンスの頻度はどのくらい?
住宅用太陽光発電システムの場合、導入1年後に保守点検を行います。設置後の初期不良を発見し、メーカー保証で修理・交換することができます。
その後は少なくとも4年に1回保守点検を受けましょう。メーカー保証が終了する前年に点検を行い、保証期間中に修理を済ませることも大切です。
まとめ
太陽光発電を安全に長期間運用するためには、発電効率をいかに落とさないかがポイントです!
「費用がかかるかもしれない」「面倒くさい」といった理由で放置してもらうと、想定よりもメンテナンス費用がかかったり、設備の交換費用がかかってしまったりと本末転倒です。
太陽光発電を設置するときには、事前にメンテナンスについて業者に確認し、もしもの時の連絡先なども交換しておくことをおすすめします。
もし、定期的なメンテナンスが難しく、太陽光発電の売却を考えているなら、一度仲介業者に見積もり依頼をしてみるのもいいでしょう。